当直明けを「休日」として扱ってはいけないと思う理由

当直明けに、夕方から懇親会の予定を入れていたことがあります。

その日はほぼ徹夜の当直になりました。昼過ぎにようやく病院を出て帰宅し、少しだけ眠るつもりでした。しかし、目が覚めたときには、懇親会に間に合わない時間になっていました。

単なる寝坊にも見えます。しかし、そもそもの間違いは、ほぼ一晩眠らずに働いた日の午後を「休日」として予定に入れたことでした。

私は市中病院で働く内科系の勤務医で、月に2〜3回、主に救急当直をしています。救急対応だけでなく、必要があれば病棟患者にも対応します。

働き方改革によって、以前よりは当直明けに帰りやすくなりました。それでも、当直明けは朝から自由に使える休日ではありません。長時間勤務がようやく終わり、睡眠と判断力を回復させるための時間です。

ここでいう「休日」は、労働法上の休日区分ではなく、私生活の予定を自由に入れられる一日、という意味で使っています。

この記事では、医師の当直がほかの職種の夜勤とどう違うのか、当直明けを休日として扱って失敗した経験、そして現在どのように過ごしているのかを書きます。

当直明けの午前に病院を出る疲れた勤務医のイメージ

医師の当直は「夕方から翌朝までの夜勤」ではない

医師以外の人と話していると、当直を「夕方に出勤し、翌朝に帰る夜勤」だと思われていることがよくあります。

しかし、私の当直日は通常どおり午前8時30分から始まります。

日中は普段の診療業務を行い、そのまま夕方から翌朝まで当直に入ります。夜間は救急患者を診察し、救急車を受け入れ、重症患者に対応します。病棟患者の転倒や状態変化、その他のトラブルで呼ばれることもあります。

朝になって当直時間が終わっても、すぐに帰れるとは限りません。当直中に診た患者の引き継ぎや、担当している病棟患者への対応が残っています。

現在、病院を出られるのは翌日の午前10時から12時ごろです。午前8時30分から数えると、病院にいる時間は約25時間半から27時間半になります。

他職種の夜勤と、どちらが大変かを比較したいわけではありません。勤務の組み方が違うのです。ところが、この違いは病院の外ではほとんど知られていません。

驚くことに、看護師やコメディカルなど、同じ病院で働く職種からも夜勤と同じように受け取られることがあります。

働き方改革前は「17時までに帰る」が目標だった

2024年4月から医師の働き方改革の新制度が始まり、医師の時間外・休日労働に上限規制が適用されました。長時間労働となる医師については、勤務間インターバルや代償休息など、健康を確保するための仕組みも設けられています。

私の職場でも、以前より当直明けに帰りやすくなりました。

改革が進む前は、当直明けに正午まで病院へ残ることはほぼ確定していました。そのうえで「17時までには帰りたい」と考えていました。

午前8時30分に勤務を始め、翌日の17時まで病院にいれば、約32時間半です。夜が明けても日勤業務を続け、夕方になってようやく帰る働き方が珍しくありませんでした。

現在は、翌日の午前10時から12時ごろには帰れるようになっています。これは大きな改善です。

しかし、「以前より早く帰れるようになった」ことと、「当直明けが休日になった」ことは同じではありません。病院を出る時点で、すでに通常の一日分を超える時間を職場で過ごしています。

当直中の睡眠は平均3〜4時間、ほとんど眠れない日もある

比較的落ち着いた当直であれば、途中で仮眠を取れることもあります。それでも、私の睡眠時間は平均すると3〜4時間程度です。

救急車が立て続けに来る、重症患者の対応で手が離せない、といった日はほとんど眠れません。救急外来が落ち着いていても、病棟患者の転倒や急な状態変化で起こされます。

仮眠室に入れた時間が、そのまま睡眠時間になるわけではありません。いつ呼ばれるか分からない状態では眠りが浅くなりますし、呼び出しの後にすぐ眠り直せるとも限りません。

そして朝になれば、病棟患者の対応や引き継ぎがあります。

強い眠気で集中できず、当直明けの病棟業務を続ける前に、短時間でも仮眠しなければならないことがあります。眠いから仕事をさぼっているのではありません。このまま判断を続ける方が危険だと感じる状態です。

集中力と判断力が落ち、徒歩の信号待ちでも寝落ちした

当直明けには、強い眠気だけでなく、集中力や判断力の低下を感じます。普段より苛立ちやすくなり、動悸が出ることもあります。

帰宅途中、徒歩で信号待ちをしていたとき、一瞬寝落ちし、身体が崩れそうになったことがあります。

立ったまま信号を待つ短い時間にも意識が落ちる。その状態で、自動車や自転車を安全に運転できるとは思えません。私は当直明けには危険なので、乗り物に乗らないようにしています。

長時間勤務後の移動リスクは、私個人の感覚だけではありません。

米国の研修医2,737人を対象に、17,003件の月次報告を分析した研究では、24時間以上の長時間勤務後は、そうでない勤務後と比べて、自動車事故を報告するオッズが2.3倍、ニアミスを報告するオッズが5.9倍でした。米国の研修医を対象とした自己報告研究であり、日本の勤務医へ数字をそのまま当てはめることはできません。それでも、長時間勤務後の帰宅そのものが安全上の問題になり得ることを示しています。

また、集中治療室の研修医を対象にした研究では、24時間以上の連続勤務を含む従来型の勤務では、それをなくした勤務より重大な医療過誤が36%多く発生しました。勤務時間を短くすればすべて解決するわけではなく、引き継ぎの増加など別の問題もありますが、眠れていない医師がそのまま診療を続けることを個人の根性だけで解決してはいけません。

当直明けに予定を入れて、何度も失敗した

以前の私は、当直明けの午後を「空いている時間」と考えていました。

美容室の予約に間に合わなかった

当直明けの昼過ぎに、美容室の予約を入れたことがあります。

午前中には病院を出られると考えていました。しかし、病棟患者の対応や引き継ぎが長引き、予約時間に間に合いませんでした。

当直は、何時に仕事が終わるかを自分で決められません。夜間の救急対応が多ければ、翌朝に整理しなければならない情報や引き継ぎも増えます。昼から予定を入れること自体に無理がありました。

懇親会を寝過ごした

別の日には、夕方から飲み会・懇親会の予定を入れていました。

昼過ぎに帰宅できれば、少し眠ってから参加できると思っていました。しかし、その日はほぼ徹夜でした。帰宅後に眠り、目が覚めたときには参加できない時間になっていました。

どちらも、予定管理の失敗ではあります。しかし根本には、「当直明けは休みだから予定を入れられる」という考えがありました。

勤務がいつ終わるか分からない。終わっても、どの程度動けるか分からない。当直明けは、通常の休日と同じ前提で予定を組める日ではありません。

「別に代休があるはず」という誤解

当直の話をすると、「当直明けとは別に代休があるはずだから、その日に予定を入れよう」と言われたことがあります。

私の勤務環境では、そのような代休はありません。

当直が夜勤だと思われていれば、当直明けは夜勤後の休息で、その後にあらためて休日があると考えるのも自然です。しかし実際には、朝から通常勤務を行い、そのまま当直し、翌日の午前まで勤務します。そして当直明けの残り時間が、事実上の回復時間になります。

病院で働いている人にも、この構造が伝わっていないことがあります。

医師の勤務は特殊で、外から見えにくい。医師同士なら説明しなくても伝わりますが、ほかの人には勤務時間から説明しなければ理解してもらえません。そういうとき、医師は孤独だと感じます。

ただ、周囲を責めたいわけではありません。働き方が分かりにくいうえ、医師自身も「昔より早く帰れるのだから、午後を有効に使わなければ」と考えてしまうからです。

現在の当直明けの過ごし方

何度か失敗して、現在は当直明けに大きな予定を入れず、ある程度決まった流れで過ごしています。

まず、普段は仕事で行けない店でランチを食べてから帰ります。

これは当直明けの小さな楽しみです。つらい勤務の後を、ただ帰宅して眠るだけにしないための区切りにもなっています。

帰宅したらシャワーを浴び、1時間程度眠ります。

長く眠り続けると、夜に眠れなくなり、翌日以降まで生活リズムが崩れてしまいます。そのため、夕方以降は眠らないようにし、その後は普段どおり起きて過ごします。夜は通常より早めに寝ますが、極端に早い時間から眠らないようにもしています。

これは、医学的にすべての人へ推奨できる睡眠法として紹介しているわけではありません。当直の忙しさも、必要な睡眠時間も人によって違います。私が試行錯誤した結果、現在採用している過ごし方です。

大切なのは、当直明けを「もう一つの休日」として予定で埋めないことです。

当直明けは、休日ではなく回復のための時間

医師の働き方改革によって、当直明けにも夕方まで働き続ける状況は改善しました。少なくとも私の職場では、以前より早く帰れるようになっています。

それでも、午前中に帰れるからといって、残りの時間を普通の休日として使えるわけではありません。

当直明けに何もできなかったとしても、それは休日を無駄にしたことにはなりません。眠り、食事を取り、判断力と感情の余裕を取り戻すことが、その日の役割です。

本人だけでなく、家族や職場も、当直明けを「空いている日」ではなく「回復が必要な日」として考える必要があります。

そして病院側も、当直明けに帰宅させるだけで終わりではありません。夜間にどの程度眠れたのか、翌朝にどのような業務を担わせるのか、安全に帰宅できる状態なのかまで含めて考える必要があります。

まとめ

私の当直日は、通常どおり午前8時30分に始まります。救急と病棟の対応をしながら夜を越し、病院を出るのは翌日の午前10時から12時ごろです。

改革前の「17時までに帰ることが目標」という働き方からは改善しました。それでも、平均睡眠時間は3〜4時間程度で、ほとんど眠れない日もあります。

美容室の予約に間に合わず、懇親会を寝過ごしたことで、ようやく当直明けを休日として扱うことをやめました。

現在は、ランチを食べて帰り、シャワーを浴び、1時間程度眠り、夜の睡眠を崩さない範囲で早めに休むようにしています。

当直明けは、朝から始まる休日ではありません。

長時間勤務が終わり、次の仕事と日常生活へ戻るための、回復の時間です。

医師の当直や長時間労働の背景については、「医師の過労死――病院は助けてくれない」と「医療業界の『勉強させているから薄給無給でも我慢しろ』を終わらせたい」でも書いています。


参考資料

公開時の注記

本記事は、市中病院に勤務する医師個人の当直経験と見解をまとめたものです。本文中の「休日」は、労働法上の休日区分ではなく、私生活の予定を自由に入れられる一日という意味です。当直体制、宿日直許可、勤務間インターバル、代償休息、休日の扱いは、医療機関や医師の労働時間区分によって異なります。睡眠や体調に問題がある場合は、所属施設の産業医や専門家へ相談してください。

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