妻と子どもが、そろって体調を崩した日がありました。
その日は、私ができるだけ早く帰宅し、夕食の準備など家庭のことを引き受けたいと考えていました。しかし夕方、担当している患者の緊急入院が入りました。病院を離れることができず、家族が助けを必要としている日に、家庭のことを担えませんでした。
私は市中病院で働く内科系の勤務医です。妻も医療従事者ですが、医師ではありません。子どもが1人いて、夫婦ともに働いています。
普段の家事や育児は分担しています。それでも、緊急入院や当直、休日のオンコールが入れば、決めていた担当は簡単に崩れます。私ができなくなった家事は消えるわけではなく、多くの場合、妻が補うことになります。
この生活を続ける中で分かったのは、当直のある共働き家庭では、家事を速くこなすだけでは足りないということでした。
家事の工程そのものを減らす。機械や外部サービスへ移す。忙しい日は、きちんと作ることを諦める。そして予定が崩れたときに、立て直せる余白を残す必要があります。
この記事では、私たちが実際に使っている家電やサービス、やめた家事、家族の予定が崩れた経験を書きます。ただし、これは一つの家庭の方法です。特に女性医師や医師同士の共働き家庭には、私の立場からは見えていない負担があることも、後半で触れます。

わが家は共働きで、私には当直と緊急対応がある
わが家は、妻と子ども1人の3人家族です。妻は非医師の医療従事者で、夫婦共働きです。
私は普段、次の家事や育児を主に担当しています。
- 食器洗い
- ゴミ捨て
- 水回りの掃除
- 子どもの送迎
- 休日の食事の準備
家事の担当は大まかに決めていますが、細かい作業まで完全に固定しているわけではありません。仕事や体調に余裕がある方が、できることを積極的に行うようにしています。
この方法は、普段であればそれなりに機能します。しかし、当直日や当直明けには、私の担当分を妻が補います。夕方に緊急の仕事が入ったときも同じです。
家族の体調不良も、患者の急変も、予定表には書けません。どちらも待ってはくれませんが、緊急入院の対応を途中で止めて帰ることはできません。
「担当を決めたから大丈夫」ではなく、担当者が動けなくなったときにどうするかまで考えて、ようやく家庭が回ります。
家族が体調を崩した日に、緊急入院が入った
妻と子どもが体調を崩した日は、私が早く帰り、夕食の準備などをするつもりでした。
ところが夕方、患者の緊急入院が必要になりました。入院の手配、診療、関係者への連絡などが続き、予定していた時間には帰れませんでした。
病院にいる私から見れば、必要な仕事をしているだけです。しかし家庭から見れば、妻も子どもも体調が悪く、本来なら私が最も家にいるべき日に帰ってこなかったことになります。
食洗機やレトルト食品を用意していても、その日に夕食を準備し、体調の悪い家族を支える人まで自動で生まれるわけではありません。家事を効率化できても、「必要なときに家庭へ戻れない」という勤務医の問題は残ります。
この日のことは、家事の量を減らすだけでは解決できない負担があると考えるきっかけになりました。
一日ごとの平等より、家事が止まらないことを優先する
共働き家庭の家事分担では、「半分ずつ」が理想に見えます。私も、できるだけ偏らない方がよいと思っています。
しかし、わが家では毎日同じ割合にすることは現実的ではありません。私が当直で不在の日に、私の担当分を翌日まですべて残しておけば、食器も洗濯物もたまり、子どもの生活にも影響します。
そのため、大まかな担当は決めながら、余裕のある方が補う形にしています。
ただし、「助け合い」という言葉は便利すぎます。私の勤務が理由で予定が崩れれば、余裕があるからではなく、妻がやらざるを得ない場面もあります。それを「お互いさま」で済ませると、負担の偏りが見えなくなります。
私が意識しているのは、家事を減らす改善案を自分から出すこと、時短につながる家電には費用を惜しまないこと、そして休日には妻が家事をしなくてよい日を作ることです。
それでも、急な予定変更を引き受けてもらった事実が帳消しになるわけではありません。完全な解決策ではなく、偏りを少しでも戻すために現在行っていることです。
最も効果を感じるのは、ドラム式洗濯機と食洗機

わが家では、次の家電を使っています。
- 食器洗い乾燥機
- ドラム式洗濯乾燥機
- ロボット掃除機
- オーブンレンジ
中でも、日々効果を感じるのは、ドラム式洗濯乾燥機と食器洗い乾燥機です。
洗濯は、洗ってから干し、乾いたら取り込むという複数の工程があります。途中で出勤時間や迎えの時間が来れば、そこで作業が止まります。乾燥まで任せられれば、少なくとも「干す」「天気を気にする」「帰宅後に取り込む」という工程を減らせます。
食器も同じです。食後にすべてを手洗いする前提では、疲れている日に流しへ食器がたまります。食洗機へ入れられる物を増やすと、人が手を動かす時間だけでなく、「今夜洗うか、明日に回すか」と考える回数も減りました。
家電の価値は、単純な作業時間の短縮だけではありません。途中で中断しなければならない作業と、日常の小さな判断を減らせることにあります。
食洗機で洗いやすい食器と、乾燥できる服へ変えた
家電を買うだけでは、思ったほど家事は減りませんでした。家電へ任せやすい物に変える必要がありました。
わが家では、食器を食洗機で洗いやすい物へ少しずつ統一しました。箸も同じ物をそろえ、洗った後に正しいペアを探す作業をなくしました。
服は、ドラム式洗濯機で乾燥できる物を増やしました。おしゃれ着は別にまとめて洗います。すべての服を毎回細かく仕分けるのではなく、普段着の管理をできるだけ単純にしています。
風呂も、使用後に毎回拭き上げることをやめました。
一つひとつは数分の作業かもしれません。しかし、共働きで子どもがいると、この数分と判断が一日の中に何度も出てきます。時短とは、手を速く動かすことではなく、やらなくてよい工程を増やすことだと思うようになりました。
忙しい日は、食事を作らない
食事については、ネットスーパー、レトルト食品、オーブンレンジを使っています。
それでも夫婦ともに忙しい日は、食事を作りません。外で食べて帰るか、買って帰ります。
以前は、家で食事を作る方がきちんと生活できているように感じていました。しかし、仕事が遅くなった日に買い物をし、一から調理し、食器を片づけると、睡眠や家族と過ごす時間が削られます。
毎日の食事を手作りすることより、その日に家庭が無理なく終わることを優先しています。
レトルト食品や惣菜を使うことは、家事をさぼることではありません。忙しい日のために、最初から別の選択肢を用意しておくことです。
年1回、5万円を払って掃除を外注する
日常の掃除にはロボット掃除機を使い、水回りは私が担当しています。それとは別に、年1回、専門の業者へ掃除を依頼しています。
費用は1回あたり5万円程度です。
決して小さな金額ではありません。それでも、自分たちだけでは後回しになりやすい場所をまとめて整えてもらえるため、必要な支出だと考えています。
家電や外注は、家事を担う人のぜいたくではなく、家族の時間を買い戻す手段です。一方で、費用を出せばすべての家庭が同じ方法を使えるわけではありません。住居、収入、サービス提供地域によって選択肢は変わります。
この記事で紹介している金額も、わが家が実際に支払っている範囲であり、すべての清掃サービスの相場を示すものではありません。
予定を共有しても、残業とオンコールの時刻までは読めない
夫婦の連絡には主にLINEを使い、勤務表と家族の予定はTimeTreeで共有しています。忘れそうな予定は、お互いにリマインドします。
予定を一か所にまとめると、「聞いていなかった」「当直日を忘れていた」という行き違いは減らせます。
しかし、予定を共有することと、予定どおりに過ごせることは別です。
妻の両親と一緒に夕食を取る予定の日、仕事が長引き、私だけ到着が遅れたことがあります。
カレンダーには前もって入れていましたし、私も間に合わせるつもりでした。それでも、その日の診療が予定どおりに終わるとは限りません。遅れる本人だけでなく、妻と子ども、そして待っている妻の両親の時間まで変えてしまいます。
これは緊急のオンコールに限った話ではありません。通常の勤務日の残業でも、家族とその周囲の予定へ影響が広がります。
休日に家族で近場のショッピングモールへ出かけていたとき、オンコールで病院から呼び出されたことがあります。私が病院へ戻る必要があり、家族も買い物を早めに切り上げて帰宅しました。
呼び出されたのは私ですが、失われたのは私の休日だけではありません。妻と子どもの外出も中断されました。
当直やオンコールの予定をカレンダーへ入れることはできます。しかし、通常勤務が何時に終わるか、オンコールで何時に呼ばれるか、対応に何時間かかるかまでは分かりません。共有アプリは予測不能性を見えるようにはしてくれますが、予測可能にはしてくれません。
女性医師の家庭では、「余裕のある方」がいないこともある
ここまで書いたのは、男性医師である私と、非医師の医療従事者である妻の家庭の話です。妻も忙しく働いていますが、私に緊急の仕事が入ったときは、結果として妻が予定を変えて家庭を支える場面があります。
この経験を、そのまま女性医師本人の経験として語ることはできません。
日本医師会が病院勤務の女性医師を対象として2024年11月から2025年1月に実施した調査では、有効回答8,928人のうち61.5%が、「女性医師としての悩み」として「家事と仕事の両立」を選びました。
同居する未就学児がいる回答者では90.2%、配偶者が医師の回答者では75.9%でした。いずれも複数回答の調査であり、家事分担の実態や悩みの原因を直接示す数字ではありません。それでも、女性医師、とりわけ幼い子どもがいる家庭や医師同士の家庭で、仕事と家事の両立が大きな課題であることは分かります。
夫婦ともに医師で、双方に当直やオンコール、緊急対応があれば、「余裕のある方がやる」という方法そのものが成立しない日もあるはずです。私は医師同士の家庭の大変さを周囲から聞くことはありますが、自分の経験ではないため、具体的な方法まで一般化することはできません。
また、男性医師が家電を買い、家事の効率化を提案するだけで、女性側の負担を公平にできたとは言えません。家族の体調不良、急な予定変更、食事の準備、家庭の細かな段取りを誰が引き受けているかまで見なければ、分担の実態は分からないからです。
女性医師の働き方を考えるときも、本人だけに「効率化」を求めるのではなく、配偶者の家事・育児参加、保育の代替手段、そして予測不能な勤務そのものを減らす職場側の仕組みが必要だと思います。
家電を増やしても、妻への負担はなくならない
わが家では、食洗機やドラム式洗濯機を使い、食器や服も管理しやすい物へ変えました。予定を共有し、掃除を外注し、忙しい日は食事を作らないことにもしています。
以前より、家事に追われる時間は減りました。
それでも、勤務医である私には緊急の仕事があり、妻へ負担をかけています。体調を崩した家族の夕食や看病を家電へ任せることはできません。残業で待たせた人の時間や、オンコールで中断した家族の休日を、後から完全に取り戻すこともできません。
だからこそ、「便利な家電をそろえたから、わが家の家事問題は解決した」とは考えないようにしています。
家事を効率化することと、負担の偏りを認めて調整することは別の問題です。
完璧な家事分担より、崩れたときに立て直せる家庭へ
当直やオンコールのある家庭では、精密な担当表を作っても、そのとおりに動けない日があります。
わが家で現在行っているのは、次のようなことです。
- 家事の担当は大まかに決める
- 緊急の仕事が入りそうな段階で、早めに共有する
- 食洗機とドラム式洗濯機へ任せられる物を増やす
- 箸のペア探しや風呂の拭き上げなど、小さな工程をなくす
- 忙しい日は食事を作らない
- 年に数回の大きな掃除は外注する
- 休日には、妻が家事をしなくてよい日を作る
どれも、すべての家庭に当てはまる正解ではありません。家族構成、勤務形態、保育環境、収入によって使える方法は変わります。
大切なのは、毎日同じ割合で家事をすることだけではなく、予定が崩れたときに家庭をどう立て直すかを話しておくことです。そして、立て直してくれた人の負担を「助け合い」という言葉だけで見えなくしないことです。
当直明けの時間を家庭から見たときの問題については、「当直明けを『休日』として扱ってはいけないと思う理由」でも書いています。
参考資料
- 日本医師会「『女性医師の勤務環境の現況に関する調査』の結果を報告」
- 日本医師会「女性医師の勤務環境の現況に関する調査 クロス集計表」

